息子に会いたい

21歳の息子に先立たれてしまった母

ことば(2)

息子の飛び降りた所は、1階の家の庭だった。

そこの家の人は、息子のこともよく知っている人だった。



警察署での身元確認のあと、その足で1階の人の所にお詫びに行った。


ただだだ頭を下げて謝るしかなかった私たちに、


わざわざそんなことで来なくてもいいのに。

謝る必要なんかないから。

そんなことは気にしなくていいから、

そんな暇があったら、息子さんのそばにいてあげなさい。


と言われた。


とんなに責められても、どんなに非難されても仕方なかったのに。

たとえ、慰謝料を払えと言われてもそれは当然のことなのに。

有り難くて、申し訳なくて、涙が溢れた。



前に「ことば」というブログに書いた近所の人っていうのがこの人のこと。



四十九日を過ぎた頃、たまたまその人に会った時、


庭にそのまま車を停めるのもためらわれるから、今は他に駐車場を借りてそこに停めている。

四十九日も過ぎたから、そろそろ車を戻してもいいかなと思ってる。

下の砂利も新しいのに変えた方がいいかなと思って。

あなたもその方が安心できるでしょ?


と言われた。


私はそういうことには全く気が回らなくて、普通に考えればわかることなのに。

自分が無知だからなのか、考える余裕がなかったからなのか、

そんな状況になってるとは全然気付かなかった。


本当に申し訳なくてひたすら謝って


駐車場代とか新しい砂利のお金とか全部私が払います


と言ったら、


あかん!

何言うてるの。

私はそんなつもりで言うたんじゃない。

四十九日も過ぎたから彼も無事に天国に行ったやろうし、そろそろ元に戻してもいいかなとそう思ったから言うただけで。

お金なんかもらうつもりなんかないし、そんな余計なことは考えたらあかんで。

あなたは今自分のことだけでいっぱいいっぱいやねんから、いらんことは考えんでもいい。

ほんまにそんなつもりで言うたんじゃないから。

あかんで、またそんなこと言うたら!


と叱られた。


その代わり、彼には天国からこのおばちゃんのこともちゃんと見守っといてなって頼むことにするから


って。



本当に申し訳なくて、有り難くて。


自分のあほさ加減に腹が立って情けなくて。


息子はなんていうことをしてくれたんだろうという思いもあって、遺影の前で大泣きした。

旅立ち

息子は



家のベランダから飛び降りた。




高い所が苦手だったはずなのに

怖かったはずなのに


どんな思いで飛び降りたのだろう。


とても気持ちの優しい子だったから、

そんなことをすれば、

まわりにどれだけ迷惑をかけることになるかってこと、

考えればわかったはずなのに。


きっと

何も考えられなかった。


飛び降りる怖さも

そのあとのことも


何も

何も考えられなかったのだろう。



自分の命を絶つ


ただそれだけしか考えていなかった

のだと思う。

息子の代わりではないけれど



楽天のお買いものパンダのぬいぐるみ。

今日、届いた。


これを買ったのは


息子と誕生日が同じ


だったから。



以前、「お買いものパンダの本」を買って読んだら、お買いものパンダの誕生日が息子と同じだってことがわかった。

思わず楽天で探して、売り切れだったから迷いもせずに予約した。



何をやってるんだろう。

たかがぬいぐるみの誕生日と息子の誕生日がいっしょだからって。

無駄遣いをしてしまったと後悔した。


娘に話すと

「いいやん、かわいいし。

私も誕生日がいっしょなのが何かの縁かなって思ってた」

って。


よかった。

救われた。



もし息子がいてもこれを買っていただろうか?

たぶん買わなかった。

「お買いものパンダと誕生日がいっしょやってよ」

「何?それ」

で終わってただろうな。