ことば(2)
息子の飛び降りた所は、1階の家の庭だった。
そこの家の人は、息子のこともよく知っている人だった。
警察署での身元確認のあと、その足で1階の人の所にお詫びに行った。
ただだだ頭を下げて謝るしかなかった私たちに、
わざわざそんなことで来なくてもいいのに。
謝る必要なんかないから。
そんなことは気にしなくていいから、
そんな暇があったら、息子さんのそばにいてあげなさい。
と言われた。
とんなに責められても、どんなに非難されても仕方なかったのに。
たとえ、慰謝料を払えと言われてもそれは当然のことなのに。
有り難くて、申し訳なくて、涙が溢れた。
前に「ことば」というブログに書いた近所の人っていうのがこの人のこと。
四十九日を過ぎた頃、たまたまその人に会った時、
庭にそのまま車を停めるのもためらわれるから、今は他に駐車場を借りてそこに停めている。
四十九日も過ぎたから、そろそろ車を戻してもいいかなと思ってる。
下の砂利も新しいのに変えた方がいいかなと思って。
あなたもその方が安心できるでしょ?
と言われた。
私はそういうことには全く気が回らなくて、普通に考えればわかることなのに。
自分が無知だからなのか、考える余裕がなかったからなのか、
そんな状況になってるとは全然気付かなかった。
本当に申し訳なくてひたすら謝って
駐車場代とか新しい砂利のお金とか全部私が払います
と言ったら、
あかん!
何言うてるの。
私はそんなつもりで言うたんじゃない。
四十九日も過ぎたから彼も無事に天国に行ったやろうし、そろそろ元に戻してもいいかなとそう思ったから言うただけで。
お金なんかもらうつもりなんかないし、そんな余計なことは考えたらあかんで。
あなたは今自分のことだけでいっぱいいっぱいやねんから、いらんことは考えんでもいい。
ほんまにそんなつもりで言うたんじゃないから。
あかんで、またそんなこと言うたら!
と叱られた。
その代わり、彼には天国からこのおばちゃんのこともちゃんと見守っといてなって頼むことにするから
って。
本当に申し訳なくて、有り難くて。
自分のあほさ加減に腹が立って情けなくて。
息子はなんていうことをしてくれたんだろうという思いもあって、遺影の前で大泣きした。