霧の向こうに
朝起きて外を見てみたら、すごい霧だった。
すぐ先も見えないくらいの濃い霧だった。
すごいなぁと思いながらしばらく見ていると、この霧の向こうには息子のいる世界があるような気がしてきた。
霧に向かって歩いて行くと、息子が待っていてくれる、手を伸ばしたら、霧の向こうから息子の手が伸びてきて、私を引っばってくれるような、そんな気がした。
普段、息子を思いながら、よく空を見上げる。
空に向かって手を伸ばしたら、息子が引っぱり上げてくれないかなと思いながら、手を伸ばしてみる。
空の上からは
「まだやで、まだ早いで」
という声が聞こえる。
そうやね。
まだ早いね。
まだまだ生きていかなあかんよね。
まわりの冷たい視線や
態度なんかは跳ね飛ばして
優しい言葉と
暖かい気持ちだけを胸に抱いて。
大丈夫だ。
私はひとりじゃない。
ひとりじゃないから。
大丈夫。