しんどい
家の駐車場に車を停めていると、向こうから娘の同級生のお母さんとその御主人であろう人が歩いて来るのが見えた。
そのお母さんとは、娘が小学生の頃は何度か喋ったことはあるけど、それ以降は会っても挨拶すらしない、そんな間柄。
二人が私の方を見ながら、お母さんの方が御主人に何か言っている。
明らかに私のことを話しているのがわかる。
車から荷物を下ろしていると、御主人の方が何度も何度も何度も振り返って、私を見ている。
何回振り返るねん。
見るな。
そんな人ばかりじゃない、変わらずに普通に接してくれる人もいる。
いつもは気にしないようにしているけど、今日は、なぜかずっと頭から離れないでいる。
息子が亡くなった直後に、母は
「人の噂も七十五日って言うから、そんなもんみんなすぐに忘れてしまうわ」
と言ったけど、七十五日ぐらいで忘れられるようなことではないだろう。
8年ぐらい前に、娘の同級生の男の子が、大学のサークルの合宿中に、みんなでお酒を飲んでる時に気分が悪くなって別室で寝かせていたら、朝、急性アルコール中毒で亡くなっていたということがあった。
その同級生の御両親は、朝までほったらかしにしていたことに対して裁判を起こして、勝訴したって新聞に載っていた。
息子が亡くなる前でも時々、そんなことがあったなぁと思い出すことがあった。
今は、ただ顔を知っているというだけだけれど、その同級生のお母さんはどうしているのかなと思う。
息子を亡くした同じ立場としての思いで。
私がこんなふうに思い出すのも、私が嫌なように、そのお母さんにとっても嫌なことなのだろうか。
私の場合とはまた違うかな。
違うんだろうな。
変なふうに、偏見を持って見られたりすることはないんだろうな。
そんなことを気にしてたら、生きていけないよな。
あと何十年か、先は長いのに。
でも、気にしてしまう。
しんどいな、いろいろ。
早く、息子に会いたい。