思い出すだけ
晩ご飯に使おうと白菜を出して、外側から1枚ずつはがしていたら、虫食いの穴があった。
この穴の中に虫がいたらいやだなと思いながらはがしていると、1cmぐらいの青虫が出てきた。
思わず
「ぎゃあああーーー」と叫んでしまった。
こんな時息子がいたら
「何?どうしたん?」
って、急いで飛んで来てくれるのに。
夏にたまに家の中に、蛾とか見たことがないような虫が飛んで入って来ることがある。
その時はいつも息子に、外に逃がしてくれるように頼んでいた。
息子は捕まえようとはするものの、へっぴり腰になっている。
虫があまり得意ではないから。
なんとか捕まえようとはするけど、結局は私が捕まえて逃がす。
息子は頭に手をやりながら、すまなそうに
「ごめん、虫はちょっと苦手やねん」
と言う。
知ってるよ、そんなことは。
知ってるけど、私はまた次の時にも息子に頼む。
息子はいやだとは言わない。
嫌がらずに頑張って捕ろうとしてくれる。
ちゃんと捕まえられる時もあるけど、大抵は私がやることになる。
いつもいつもその繰り返し。
私は息子とのそんなやり取りが、楽しくて好きだった。
できることならもう一度、息子と笑い合いたい。
話したい。
触れたい。
今は思い出すこと、ただそれだけしかできないんだな。
寂しい。
会いたい。