息子に会いたい

21歳の息子に先立たれてしまった母

思い出すだけ

晩ご飯に使おうと白菜を出して、外側から1枚ずつはがしていたら、虫食いの穴があった。

この穴の中に虫がいたらいやだなと思いながらはがしていると、1cmぐらいの青虫が出てきた。

思わず

「ぎゃあああーーー」と叫んでしまった。


こんな時息子がいたら

「何?どうしたん?」

って、急いで飛んで来てくれるのに。



夏にたまに家の中に、蛾とか見たことがないような虫が飛んで入って来ることがある。

その時はいつも息子に、外に逃がしてくれるように頼んでいた。

息子は捕まえようとはするものの、へっぴり腰になっている。

虫があまり得意ではないから。

なんとか捕まえようとはするけど、結局は私が捕まえて逃がす。

息子は頭に手をやりながら、すまなそうに

「ごめん、虫はちょっと苦手やねん」

と言う。

知ってるよ、そんなことは。

知ってるけど、私はまた次の時にも息子に頼む。

息子はいやだとは言わない。

嫌がらずに頑張って捕ろうとしてくれる。

ちゃんと捕まえられる時もあるけど、大抵は私がやることになる。

いつもいつもその繰り返し。


私は息子とのそんなやり取りが、楽しくて好きだった。

できることならもう一度、息子と笑い合いたい。

話したい。

触れたい。


今は思い出すこと、ただそれだけしかできないんだな。


寂しい。


会いたい。

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