息子に会いたい

21歳の息子に先立たれてしまった母

夏の日

車に乗って信号待ちをしていたら、斜め向こう側に小学校高学年ぐらいの男の子の集団がいるのが見えた。
その中のひとりの、帽子をかぶってリュックを背負って自転車に乗っているその後ろ姿が、10年ぐらい前の息子の姿に似ていた。


ドキッとした。


また気持ちが沈んでいく。


見なきゃよかったな。



そのあとスーパーに行ったら、お母さんが自分の子を呼んでいるのか、名前を叫んでいるのが聞こえた。
息子と同じ名前を。


見ないように背を向けた。


私の息子の名前を呼ぶなよ
って、羨ましいのを通り越してムカついた。


ムカつくのもおかしいけど。



毎日、何度も何度も息子の名前を呼ぶ。
どれだけ呼んでも来てはくれないけど。


夢にさえも出て来てくれない。




どうしているんだろう。



あーーー会いたい。


会いたい。



真っ黒に日焼けして、汗をダラダラかいて、いつも
「あっついな!」
って言っていた。


もう一度見たいな、その姿。

大切な大切な存在だったのに


息子が生まれてから21年の間に



言葉で傷つけたかも知れない


態度で傷つけたかも知れない


あの時



あの時や



あの時



あの時も



あの時も



あの時も




ただただ


後悔することばかり



思い出して


苦しくて



ごめんね


ごめんなさい


謝りたくて




会いたくて



会いたくて




声を上げて泣いた





今日は
泣きすぎて頭が痛い

姉弟

ダイソーに買い物に行ってレジに並んでいたら、後ろに小学校高学年ぐらいの女の子と幼稚園か小1ぐらいの男の子が並んだ。
たぶん姉弟だったのだと思う。


「あっ」
と、女の子が思いついたように
「なんか1個だけ買ってあげよか?」
と言った。
男の子は、パッと表情を輝かせて
「えっ?!いいん?」
と。
ふたりはまた店の奥へと走った。
しばらくしたら戻って来て、男の子の手にはお菓子がひとつ、ニコニコととても嬉しそうにしていた。



幼い頃の娘と息子に重なった。


息子が生まれたのは、娘が小1の時。
娘はずっと
「妹が欲しい」
と言っていて、生まれたのは妹ではなかったけど、年の離れた弟のことをかわいがってよく面倒を見てくれていた。




息子は、予定日よりも10日遅れて生まれた。
陣痛が始まっても、微弱陣痛でなかなか出て来なかった。



生まれてきたくなかったのかな。


だから


21年

それが精一杯だったのかな。