大切な宝物
息子は、ホームセンターでレジ打ちのバイトをしていた。
ある日、そこの社員の人か誰かが客になりすまして、店員の接客態度とかをチェックする覆面捜査?みたいなことをやっていて、
その時息子は
隣のレジにも聞こえるくらい大きな声で応対しており、挨拶はちゃんとお客様の目を見てお辞儀をし、丁寧さと誠実が感じられた
と褒められたらしい。
息子も喜んでたけど、私もすごく嬉しかった。
ホントに嬉しくて、むちゃくちゃ褒めまくった。
レジを打ってたら、レシートにはその人の名前が記載される。
私は息子の名前が載ったレシートがほしくて、今度行った時に息子のいるレジに並んでもいいかと聞いてみた。
私は他人のふりをして話しかけたりもしないし、私に対しても普通のお客さんとして接してくれたらいいから
いやだったら行かないから
と。
息子は、
別にいやじゃない、いいよ
と言ってくれた。
それから何日かしてから、仕事帰りにふと思いついて行ってみた。
買う物をカゴに入れて息子のいるレジに並んだ。
私に気付いた息子は、何も言わずにいきなり行ったからちょっとびっくりしながらも照れ臭そうにしてた。
「いらっしゃいませ」
とお辞儀されて、つい私も頭を下げてしまった。
息子は慣れた手つきでひと通り終え、商品を受け取った私は、息子の顔を見ながら笑顔で
「どうもありがとう」
と言ったら、
「ありがとうございました」
と深々とお辞儀をされた。
まるでおままごとをしてるみたいだったなと、あとで笑えた。
もらったレシートにはちゃんと息子の名前が載っていた。
その6日後、息子は旅立ってしまった。
あのホームセンターにはもう行けそうにない。
あの時のレシートは私の大切な大切な宝物になった。