息子に会いたい

21歳の息子に先立たれてしまった母

母をも羨む

母が入院することになった。


昨夜、急な腹痛と下痢があり、いったん治まったものの、朝には下血も加わり、慌てて病院に行ったら即入院ということになったらしい。

母から電話があって病院に行くと、母はお腹が少しシクシク痛むだけで、見た目は元気そうだった。


月曜日に大腸カメラの検査をするので、それまでは絶食と点滴。

医師には、虚血性腸炎かも知れないと言われたらしい。




病院の隣には中学校があり、病室のある5階からは、グラウンドで部活中の生徒たちの姿が見える。


母が9年前に膝の手術をした時に入院したのも、部屋は違うけど同じ5階だった。

あの時、お見舞いに行くたびに、今日と同じ風景を見ながら、その中にその時中学1年だった息子の姿を捜したものだ。

いるかな~

頑張ってるかな~

と、わくわくしながら。


それを思い出して、涙をこらえながら窓の外を見ていたら、母が

「前に入院した時、あの中に〇〇(息子の名前)はおるんかなぁって思いながらいつも見てたわ」

と言った。

母も同じことを思い出していた。


こんな所にも息子の思い出が詰まっている。


ほんとに、あっちにもこっちにも息子でいっぱい。



あとから兄も駆けつけて来て、しばらくいたあと、別れ際

「来てくれてありがとう」

と言った母の目には少し涙が滲んでいた。

その母の姿を見て、羨ましいと思った。

自分の産んだ子がふたり揃っていて、母のことを心配している、それが嬉しいと感じているであろう母のことが。


自分の母に対しても、子を亡くすという悲しみを知らなくて羨ましいと、そんなふうに感じてしまうものなんだ。

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