娘の思い
娘が京都となばなの里に行ったお土産に、麩饅頭、ういろう、わらび餅を買って来てくれた。
麩饅頭とういろうは私に、わらび餅は息子のために。
娘は、息子が幼い頃から、息子にはお土産を忘れることはなかった。
今も変わらないその気持ちが嬉しい。
娘は今、弟を亡くした悲しみとどんなふうに向き合っているのだろうか。
息子の夢を見ることはあるのか、息子を想って涙することがあるのか。
聞いてみたいと思う時もあるけど、あえて聞かないでいる。
私が娘の前では泣かないでいられるのは、娘とは息子の話をしないから。
今まで一度も息子の話をしなかったということは、もちろんない。
娘との会話の中で、時々息子の名前が出て、涙があふれることもあるし、こっそり泣いているのを見られたこともある。
娘によけいに辛い思いをさせたくないから、娘の前では涙を見せないようにしている。
7年半前に亡くなった夫の誕生日には毎年、娘はケーキを買って来る。
それは、これからもずっと忘れることなく続けられるだろう。
そんなふうに、私みたいに毎日泣くことはなくても、これからも娘は娘なりに、息子のことを忘れずに想っていくのだろうと思う。
ふたりで息子の話をすることはなくても、日々の生活の中で所々に、娘の息子への想いを感じることができる。